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白い壁、大きなガラス窓、ロサンゼルスの市街地の眺望。コルビ家の家はハリウッドヒルズに建つ他の多くの近代住宅と似ている。しかし、近隣の住宅とは大きく異なっている部分もある。その家は考え得るあらゆる破滅のシナリオにも耐えられるように造られている。大嵐、大地震、山火事はもとより、全国的な流行病、まれだがさまざまな害を及ぼしかねない核爆弾・太陽フレア・特殊な武器などによって発生する高周波電磁パルスなどからも身を守れるというのだ。地下にあるワインセラーはいざというときには地下掩蔽壕(えんぺいごう、身を隠すための上部などを覆った壕)にもなる。それでもダメなら、最後の手段として屋上のヘリパッドから緊急脱出を図ればいい。
新しいタイプの安全性を追求する住宅建築業者や住宅購入者が増えている。ハリケーン、竜巻、今週東海岸に大きな被害をもたらした大型の温帯低気圧「サンディ」のような自然現象から住居侵入、核戦争といった人為的脅威まで、あらゆるものに対処できるように造られた住宅。ハリケーンの通り道では、復興に取り組むなか、次の自然災害に備えて改築を行っている人がいる。すべての災難への対抗措置を講じようとしている人もいる。こうした要塞のような住宅の増加に拍車をかけているのは新しい技術と、嵐や地震の被害を受けやすい地域でいずれは広く使われることになるであろう建築素材である。
米フロリダ州マイアミに拠点を置くコースタル・コンストラクションのショーン・マーフィー氏は南フロリダで、ある顧客のために大型ハリケーンやそれをしのぐ災害にも耐えるように設計された敷地面積3700平方メートルの水辺の邸宅を建設している。身元が明かされていないマーフィー氏の顧客は、防水のためのゴム入り素材で包まれ厚さ2.5センチの石で覆われた厚さ30センチの強化コンクリートの壁を注文した。通常の防災建築技術で必要とされるのは、厚さ20センチの防風・防水住宅用の複合コンクリートブロックである。
「基本的には掩蔽壕のような住宅だ。大型の嵐や洪水など、なにが来てもこの家が壊れて流されるということはない」とマーフィー氏は言う。
新しい住宅開発地のなかには購入者のあいだで関心が高まっている嵐に備えた設計を売りにしているところもある。フロリダ州のメキシコ湾岸に面した高級臨海コミュニティ、アリスビーチは6万4000平方メートルもの広さを誇る。中庭付きのバミューダやグアテマラの邸宅を彷彿とさせ、強風にも耐える設計の住宅の価格は160万ドルからとなっている。その屋根は石灰石で2層コーティングされ、80センチおきに強化された厚さ20センチのコンクリートの外壁は、販売資料によると「掩蔽壕のような」安全性を実現しているという。
米中西部ではスティーブ・ハフ氏が究極の耐竜巻住宅を建てようとしている。ソフトウエア会社を興したハフ氏は、ミズーリ州クリスチャン郡に敷地面積が6500平方メートルもある強化コンクリート製のシャトースタイル邸宅を建設している。「ペンズモア」と名付けられた大豪邸の壁の厚さは30センチ、窓には大嵐のときに2×4インチの断面の木材が時速65キロで飛んできても壊れない防弾ガラスが使われている。「竜巻が来たら、この家にいるのが一番安全だ」とハフ氏は言う。
コンクリート会社への投資も行っているハフ氏によると、この家は侵入者にも強く「銀行の金庫室に穴を開けて侵入するぐらい難しいだろう」と主張する。
2014年の初めに完成すると、ペンズモアは米国で個人が所有する最大級の住宅となる。ハフ氏は多くの近親者の他にも、この家の建設に生かされた安全技術や環境的に持続可能な技術を学ぶことを望むライター、科学者、学生などをこの邸宅に滞在させる予定である。
自宅所有者や住宅建設業者は自然災害により強い家にするために、ここで使われた技術の多くをより広い範囲で生かすことができるという。たとえば、ヘリックスファイバーを中に入れることでコンクリートブロックはわずかだがゴムのように曲がるようになり、衝撃への耐性が増すことになる。これは最小の追加コストで実現できる。
フロリダ州住宅建設業協会の政府問題責任者、ダグ・バック氏によると、いくつかの過剰な建設技術は経済的に見てほとんどの自宅所有者の理にかなわないという。「収穫逓減の法則が働いてしまうのだ。大金を注ぎこみすぎるよりも、倒壊させて建て直した方がよっぽど経済的な場合もある」
そんなことは意に介さず、あらゆる危機から自らを隔離しようとする富裕層は多い。ニューヨークに拠点を置き、富裕層向けに設計・建設に関するアドバイスを行っているポラック・プラス・パートナーズの社長、クリス・ポラック氏は最近、空気や水にも困らない放射能汚染爆弾用のシェルターが付いた家を建てたいという顧客に雇われたという。食糧やその他の供給品の備蓄もあり「その家族は外気にさらされることなく快適な生活を送ることが可能だ」と同氏はいう。敷地内の別の場所や近くの建物とつながっていて、住人が避難に使えるトンネルの人気も高まっている。ポラック氏の見積もりでは、顧客が防犯・安全機能に費やす金額の平均は、5年前と比較すると少なくとも50%増加しているという。
ドン・ボーム氏は米カリフォルニア州マリブのすぐ北に位置するカマリロにある丘の中腹に地震と侵入者に強い家を建てた。コンクリートの土台に擁壁を固定するのにコンクリートと鋼ボルトの複雑なシステムを採用している住宅は全長180メートル、高さ4.5メールの塀で囲まれている。この家は現在、690万ドルで売りに出されている。
前出のハリウッドヒルズの家を所有するコルビ氏はSAFE(戦略的装甲と要塞化された環境の略語)の創業者で、住宅に地下30階までの深さの掩蔽壕を併設することができるという。同氏は屋外にいるような気分を出すため、ラスベガスのシーザーズ・パレスのように天井に雲を描き、スパ設備や映画館を備え、家族が数カ月間快適に暮らせるだけの供給品を備蓄できる掩蔽壕を設計した。最も手の込んだ施設の建設費用は1000万ドルを上回ることもあるという。
コルビ氏はロサンゼルスの自宅を家族のため、そして最新のハイテク災害対策、防犯設備を潜在顧客に披露するために建てた。スチールで覆われたコンクリート製で深さ9メートル、直径76センチのケーソン60本の上に建設された家は、大地震にも耐えられるように設計されている。
同氏の家のいたるところには、複数のカメラを使った顔認識システムも設置されている。侵入者を驚かせるためのガス噴射装置も一瞬のうちに起動できる。使用できるガスの種類は幅広く、無害だが方向感覚を失わせるものから吸い込むと衰弱状態が最高で24時間も続く有毒なものまである。
コルビ氏の家には、主寝室と子供部屋を包含する防弾素材でできた185平方メートルの部屋「セーフコア」もある。住人を隔離し、侵入者との接触が最小限になるように設計されたこの部屋は、同氏の顧客の家でもよく採用されている。同氏はかつてこの家を580万ドルで売りに出していたが、現在は売っていない。
自宅に使われた多くの技術はどの家にも簡単に生かせるはずだとコルビ氏は言う。たとえば、乾燥壁を取り付ける前に厚さ2センチ弱の合板を追加するだけで、壁の防災・防犯効果は大幅に増す。これには200ドルほどしかかからないという。空気感染する病気から身を守るには、各換気口にHEPAフィルターを設置し、エアコンからの気流を少し強めにすることで、余分な空気の排出が外気の流入を防ぐ陽圧環境を作ればいい。