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今月9~14日に東京で開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会では、欧州問題が中心議題の1つだった。ウォール・ストリート・ジャーナル・ブリュッセル支局のマシュー・ダルトン記者に欧州危機をどうみているかを聞いた。以下はインタビューの一問一答。
Q:ギリシャのこのところの状況はどうなっているのか。
A:欧州各国政府はギリシャ政府の資金不足をどのように埋めたらいいかと思案しているところだ。ギリシャはこれまでに2回の救済融資を受け取っている。第1次救済融資は2010年5月に実施されたが、その融資では十分ではないことが分かった。そのため、民間セクターのギリシャ国債保有者に対するヘアカット(債務元本の削減)をはじめとする第2次支援プログラムが実施された。これは今年2月に合意した。
しかし、ほんの数カ月で、この第2次融資も十分でないことが明らかになった。ギリシャ経済は予想よりはるかに深刻なリセッション(景気後退)に陥っていた。つまり、税収は予想されたよりも少なく、社会保障プログラムに対する支出は予想を上回っている。これは政府の財政赤字拡大を意味し、政府は何とかしてこの不足分を埋める必要がある。ギリシャが合意した救済融資は総額約1700億ユーロ(約17兆3000億円)に達しているが、それでも十分ではないようだ。
水面下では、ギリシャがユーロ圏から離脱すべきかどうかをめぐって協議が続けられている。こうした協議が裏で行われているなかで、現在、ユーロ圏の各国政府とIMFがギリシャの破綻を回避するために救済資金を提供するかどうかが問題となっている。
Q:どういったシナリオが考えられるか。
A:IMFはひそかにギリシャの公的債権者に対し、ギリシャ債務の一部を免除するよう圧力をかけている。ユーロ圏加盟各国政府はこれに抵抗してきた。しかし、ギリシャには一段の融資が必要なことから、何らかの対策が必要だ。
あるいは、何らかの金融面の措置が可能かもしれない。例えば、ギリシャ政府がさらに多くの国債や短期債を発行し、ギリシャの市中銀行が欧州中央銀行(ECB)からの資金を使ってこうした国債を買い上げることなどだ。
ただ、各国政府が実際にギリシャへの融資のためにそれぞれの予算から一層の資金を拠出する公算は小さいようだ。これは現時点では政治的に不可能にみえる。
Q:期限は迫っているのではないか。
A:ギリシャは11月末には資金が枯渇すると表明している。7月か8月には救済融資が実施される見通しだったが、この期限は既に切れている。これはギリシャが救済条件を達成できていなかったためだ。
18-19日には欧州連合(EU)首脳会議が開催される。そこで何かが決定されるかどうかは不透明だ。トロイカ(欧州委員会、ECB、IMF)は支援プログラムを軌道に戻すためにどのような政策が必要かを見極めるため、何度もアテネを訪問してギリシャ政府と交渉を続けている。トロイカはギリシャの直面する資金不足がどの程度の規模かを示す報告書を公表する。これに基づき、ユーロ圏の財務相ならびに首脳陣は何を行うかを決定しなければならない。
Q:ユーロ圏政府が政策で合意できない場合には、どうなるのか。
A:適切な対応が行われない場合には、ギリシャのユーロ圏離脱という可能性もある。ギリシャ経済は小規模だが、ギリシャがユーロ圏を離脱することになれば、ユーロ圏の他の周辺国から大量の資本が逃避する可能性もある。
さらに、スペインとポルトガル、アイルランド、そしておそらくイタリアの銀行でも預金者が預金を引き揚げる可能性がある。そうなれば、ユーロ圏崩壊に向かうプロセスが始まりかねない。それを阻止するには多額の費用がかかり、ギリシャに対する救済融資の提供以上に費用がかかることは確実だ。
Q:9日~14日のIMF・世銀総会で注目していることはあるか。
A:IMFの今後の動向については確信がないが、ギリシャ支援プログラムから撤退する可能性もあるようだ。そうなれば、ギリシャ債務が持続できないという懸念のために、IMFがこれ以上の融資を提供しないことになる。
ギリシャ問題でのIMFの立場については完全にはつかみ切れていない。ユーロ圏各国政府に対し、ギリシャ債務を一部免除しなければ、IMFは資金を提供しないと明白に主張しているのだろうか。IMFは、ギリシャに救済資金の返済能力があることを確かめたい意向のようだ。
個人的には11月に何かがあると予想している。彼ら(ユーロ圏各国政府とIMF)が決定的な解決策を打ち出すか、少なくとも一時的ながら大規模な解決策を打ち出すのではないか。
Q:では、スペインはどうなっているのか。
A:スペインは引き続き市場にアクセスできるという点でギリシャとは異なっている。スペインは依然、完全に市場で資金を調達している。スペインの金利は長期的には持続不可能だ。スペインはリセッション(景気後退)入りしており、名目国内総生産(GDP)は横ばいか低下さえしている。スペイン国債の金利は償還期限によるが、現在5~7%程度だ。従って、こうした状況は永遠に持続することはできない。
しかし、すべての国債が同時に償還期限を迎えるわけではないので、短期的にはスペインはこうした金利で、独自の資金調達が可能だろう――おそらく6カ月か1年くらいは。スペインは現時点では、救済を求めるしかないという状況には追い込まれていない。
また、スペインが国内銀行に対する救済――スペインの銀行の資本増強のために1000億ユーロを上限とする救済――で既に合意を取り付けていることは注目に値する。皮肉なことに、こうしたユーロ圏財務相による決定のために、スペイン政府の債務状況が悪化している。というのも、ユーロ圏諸国の政府がスペイン政府に資金を融資し、スペイン政府はこうした資金を銀行の資本増強に使用することになるためだ。この救済融資のために、スペイン政府は一層の債務を抱えることになる。
Q:こうした資金は直接、スペインの銀行に提供されないのか。
A:されない。今後のある時点ではそうなる見通しだとされている。これについてはあまり理解されていない。将来のある時点で、欧州安定メカニズム(ESM)が銀行各行の株式を取得することができるとされている。さらに、現在スペインに融資している資金がその際に、ESMに移される可能性があるという。
しかし、彼らは実際、これに関してはやや約束を破っている感がある。ドイツとフィンランド、オランダの財務相は数週間前に声明を発表し、ESMにはいわゆるスペインの銀行各行のレガシーアセット(旧来資産)について責任を負わせたくないと表明した。
その意味はあまり明確ではない。しかし、既に実施されているスペイン向け融資によって生じる損失の責任を負いたくないという意味かもしれない。こうした損失の大半はスペインの巨大な不動産ブームと住宅市場の崩壊から生じている。
Q:記者としてこの欧州危機を2年以上取材してきているわけだが、他の地域から見ると終わりがないように思われる欧州危機を取材するというのはどういう感じか。
A:たとえ解決策が見つかったとしても、こうした救済が必要な諸国はすべて、予見できる将来において景気低迷に直面するもようだ。ギリシャとポルトガル、アイルランドといった諸国の経済活動が急反発する可能性は非常に小さい。
問題の中核は、ユーロ圏が有効な経済システムではないということだ。欧州危機で、ユーロ圏のような、異なる多くの地域を単一通貨と1つの金融政策の下に集約する大規模な金融統合は、米国でみられるような大規模な財政トランスファーがない限りは機能しないということが示されている。米国では単一通貨のもとで多くの異なる経済が存在するが、連邦政府と連邦予算を通じて地域から地域への大規模な資金トランスファーが生じている。これは米国ではごく普通のことだ。しかし、欧州諸国がこうしたシステムに移行するには、ユーロ圏で今日支持されているよりも大幅な政治的飛躍が必要となる。ドイツの納税者にスペイン国民の退職手当を支払わせるようなシステムが求められるわけだが、そうしたことに対する支持は得られていない。それがなければ、危機は悪化の一途をたどりかねない。
潜在的にはユーロ圏から1カ国以上が離脱する可能性もあると私は考えている。ギリシャのような国にとっては、離脱の恩恵が離脱のコストをますます上回るようになっている。しかし、ユーロ圏の残りの諸国にとってはそうではない。ユーロ圏の残りの諸国にとってはその反対だ。ギリシャが離脱するコストは、残りの諸国にとって恩恵より大きい。
ユーロ圏諸国は同じような政治的障害にぶつかり続けている。それについては、ぐずぐずとした措置を取っているに過ぎない。ESMは既に大きな第1歩だった。ユーロ圏諸国はそれぞれの債務返済に充てる資金を調達するために互いに融資を行うことで合意している。現在、ユーロ圏の予算――リセッションに見舞われた諸国での失業手当に充てるための資金を調達するユーロ圏予算から拠出されたわずかばかりの資金――をめぐっては協議が始まったばかりだ。
これはリセッションに見舞われていて、ユーロ圏に存在するような種類の財政制限があることの問題の1つだ。リセッションに陥っている時には、失業者が増えることから、国の失業関連の支出が拡大する。こうした財政トランスファーは米国にはあるが、ユーロ圏には存在しない。それに関する話し合いは行われているものの、成果を上げるだけの規模では行われていない。
特にブリュッセルのEU幹部には何が必要か分かっている。というのもブリュッセルは欧州のワシントンDCのような存在だからだ。EU幹部には連邦システムが欧州にとってさらに何ができるかが分かっている。しかし、こうした決定が最終的に実行に移されるそれぞれの諸国の政府では、これに対する支持がみられない。ブリュッセルの幹部たちは各国政府に対し、こうした措置を取り始めるようますます圧力をかけているが、実現するかどうかは疑わしい。
(マシュー・ダルトン記者は2004年にニューヨークでウォール・ストリート・ジャーナルに入社し、エネルギーや環境政策について取材してきた。08年からはブリュッセル支局で経済政策と貿易問題を担当している)