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甲高い声が、小平グランドに帰ってきた。自然と周りも明るくなるその声の主は「もうちょっとかな。まだ大きなゲームになると、目が慣れていないから、どうもうまくいかない」と言った。
J1・FC東京のMF羽生直剛が左足足底筋膜炎のけがから復帰した。32歳となる年齢は、チーム最年長のルーカスに次いで上から数えて2番目。ただし、背中で語る前に、ついつい声が出てしまうタイプらしい。周りを茶化し、茶化されてチームを盛り上げる。取っ付き易いベテラン選手が、ピッチに立つと、自然と小平のピッチが華やいだ。
練習では、ミニゲームで自ら放ったシュートがゴールに決まると、右手を高々と挙げて派手に喜び、チームメートの好プレーには「ナイス」と大声で応えた。ランコ・ポポヴィッチ監督は、その姿に「ニュウ(羽生)を見ているだけで気持ちよくなるよ」と笑顔をつくる。ただし、こうも付け加えた。
「若い選手たちには、ニュウと練習できることを普通だと思ってほしくない。ニュウからは見習うべき数多くのことがある。そういう選手の近くでプレーする、学ぶことで自らの成長を早めることができる。だから、彼が今ここにいることは当たり前だと思ってほしくない」
決まって週に一度は、練習終わりに芝生の上に座り込み、周りを見渡しながら考えにふける。そうした時間が、羽生をピートの効いたモルトウイスキーのように味わい深い独特の香りを放つ選手にした。
常にプレーに意図を忍ばせてきた。羽生が走ればスペースが生まれ、守備では最も危険な場所をいち早く埋めた。何気なく発した声であってもそれが誰に向けられ、どのタイミングだったのかを見ると、それだけでなるほどと思わせる。羽生の復帰は、けが人続出で不安定な戦いを続けてきたFC東京にとってはあまりにも大きな話題だ。
さらに、今節の横浜F・マリノス戦からベンチに座ることが濃厚となった。「練習試合にも出ていないし、ちょっと長いボールの距離感が合わなかったりする。まだまだですね」と言いつつも、羽生は今自分にできることを探している。それがこの言葉一つとっても分かる。
「おいしいところは、狙っていきますよ」
取材・文:馬場康平