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防衛医大病院(埼玉県所沢市並木)が発注した粉ミルクの一般競争入札をめぐり乳業大手4社と談合したとして、競争入札妨害容疑で同病院医事課給食班の栄養士、土橋義広容疑者(56)が逮捕された。県警は長年、土橋容疑者が談合を差配し、何らかの見返りを得ていた疑いもあるとみて慎重に捜査している。仕事にひたむきで、家族を愛する“家庭人”とみられていたベテラン防衛技官に何があったのか。(中村昌史)
■「良き父親がなぜ」
「何かの間違いだ。信じられない…」。土橋容疑者の突然の逮捕に、所沢市内の自宅周辺の住民らも動揺を隠せなかった。土橋容疑者方は事件後、ひっそりと静まりかえっている。
住民によると、土橋容疑者は妻、長男、長女と4人暮らし。生活に困った様子はなかったという。年に数回行われる地元の清掃に積極的に参加。夏は、子供らと自宅前で花火を楽しむ姿が見かけられていた。
「毎朝、自転車で通勤していた。気さくにあいさつしてくれて…。子供連れでよく出かけていて、見るからに良き父親だった」。近所の男性は驚きをあらわにする。別の男性も「借金とか、トラブルとか絶対にない。悪い噂はひとつも聞いたことない」と絶句した。
おとなしく、まじめな人柄で知られた土橋容疑者。だが、県警は今回の事件を土橋容疑者の差配による実質的な官製談合だったとみて、裏付けを進めている。
■価格にメリット?各社の意図は…
県警の捜査では、土橋容疑者は7年以上前から、談合を主導していた疑いが浮上している。応札していたのは森永乳業、明治、アイクレオ、ビーンスターク・スノーの4社。県警の任意捜査に、各社の営業担当者は談合を認めている。
「市場水準を上回る価格で、確実に納入先が確保できるのは大きかったはず」
捜査関係者は、業者側のメリットをこう分析する。一般の病院では、粉ミルクを1キロあたり数百円や、無料で納入する業者もいるという。購入者は、乳児が退院後も同じ銘柄を使う傾向が強く、長く購入してもらえる見込みがあるからだ。
県警の調べでは、4社は平成22年3月下旬から23年9月下旬、計4回の一般競争入札で、1キロあたり1千円前後で順番に落札した疑いがあり、約12万~54万円分を納入していたとみられる。過去の落札価格も、ほぼ同額で推移していたことが分かっている。
「土橋容疑者の指示通りに落札していた」。営業担当者は県警の調べに、こう供述。各社も同様の認識を示している。ただ、土橋容疑者との“関係”は、異動の際も重要な引き継ぎ事項だったといい、応札も現場の一存では決められないことから、県警は各社に引き続き事情を聴いている。
■管理体制に問題?
一方で、事件の背景に、土橋容疑者の職務の専門性があったとの見方もある。
栄養士として勤務していた土橋容疑者は、昭和54年に採用後、異動はなく、一貫して現部署に勤務した。同病院は「専門性のある職員は、結果的に同じ分野を長期間担当することになる」と説明する。
土橋容疑者は、採用後間もなく入札事務を任され、逮捕時は最古参の職員として、同病院が調達する生鮮食料品や缶詰、ベビーフードなど、約400品目の入札事務を一手に取り仕切っていた。
さらに、捜査関係者は「病院側の管理体制が事件の一因になった可能性がある」とも指摘する。
通常、入札では事務担当者が適切な予定価格を算定するなどして書類を作成。上司が決裁し、問題点がないか確認する。しかし、同病院では、落札業者が決定してから、土橋容疑者が入札に関する書類を作成。上司は事後承諾していた可能性があるという。
結果的に、談合の疑いは長期間、露見することはなく、捜査の端緒となったのは内部通報だった。
「土橋容疑者は、入札すべてを調整できる立場。この状況でチェックが機能しなければ、あまりにもずさんだ」。捜査関係者はこう語る。県警は土橋容疑者の動機や事件前後の経緯について、さらに調べている。