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柔軟剤の市場が8年連続で拡大を続けるなど活況を呈している。売り上げが拡大しているのは、毎日の暮らしの中で「香りを楽しみたい」という消費者が幅広い世代で増えているためだ。その中で、花王の柔軟剤「フレア フレグランス」シリーズが存在感を増している。
「香り」掃除用品にも広がる 各社から新商品続々、衣料用柔軟剤に続け
独自技術「香りセンサー」の働きで、「水分や汗を感じるたび、さらに香りがわきたつ」というユニークな機能が消費者の心をつかんでいる。東京都墨田区にある花王の「香料開発研究所」。「フレア フレグランス」発売から約1年さかのぼる2010年、開発にめどをつけたという香りの技術「香りセンサー」の担当になった片山敦上席主任研究員は、その完成度の高さに驚いた。
「洗濯して、収納しておいた衣類をタンスから出したとき、今までにないレベルで香りを感じた。これはいけると確信した」
「香りセンサー」の開発コンセプトは「衣類を着ている間でも、香りが残ること」だった。「柔軟剤に香料をたくさん入れれば、問題は解決しそうだが、そう簡単にはいかない」と片山氏は言う。香料の成分は水分に溶けやすく、洗濯している間に溶けてなくなってしまうからだ。
複雑な香りの成分のなかで「TOP NOTE(トップノート)」と呼ばれる爽やかでフレッシュな香り成分は、特に水に溶けやすい。この「TOP NOTE」を長く残し、コントロールできる仕組みが、「香りセンサー」には備わっているという。
「汗というネガティブな要素が、良い香りというポジティブに変わるというのが、この柔軟剤の最大の強み」。ファブリック&ホームケア事業ユニットファブリックケア事業グループの山崎弘文ブランドマネジャーは「フレア フレグランス」の商品力についてこう解説する。
汗や水分に反応して、香りが飛び出すという機能を支えているのも「香りセンサー」だ。香りセンサーの詳しい仕組みについては「企業秘密」としているが、揮発性の香料成分が複数結合した新配合成分を含む、花王独自の技術だ。集合体となることにより、洗濯が終わった後も、繊維に残りやすくしているという。
また、新配合成分には、水分に反応して、互いに結合していた香料成分を解き放つ性質があり、衣類が水分に触れると、香料成分の揮発量が大きくアップする。「風船が飛んでいくようなイメージで香料成分が解き放たれるイメージ」(片山氏)だ。また、花王の調べによると、衣類をたたんで保管した場合、香りセンサーによる発香効果は約半年続くという。
現在販売されている商品ラインアップは、3つの香りだ。1つは「心華やぐパッションベリーの香り」。果物のような香りと植物の葉の香りが、木の香りに調和し、「暖かく癒やされる香り」の演出を狙った。もう1つは「摘みたてのフローラルスウィートの香り」。白い花の香りにバニラをアクセントにし、「すがすがしい香り」を演出。「みずみずしいフルーティフレッシュの香り」は、甘酸っぱいトロピカルフルーツの香りに、ムスクをアクセントにした。
消費者のニーズに合った香りをつくるため、研究所のメンバーはモニター調査を実施し、家庭訪問などを通し、女性が使っている「香り」を徹底的に調べる。片山氏は「ボディーケアやハンドクリームなど、柔軟剤以外にも、彼女らが身につける香りのトレンドを調査する」という。その結果、30代以下の若い女性が好むのは「濃厚な甘い香り」「心地よく、周りの人にも香りを楽しんでもらいたい」などの傾向が明らかになった。彼女らから意見を聞き、片山氏らの印象に残ったのは「うきうき」「上がる感じ」「華やか」「女子力アップ」などのキーワードだった。
「良い香りで、彼女たちがどんな気持ちになるかを知る上で、重要な調査」と片山氏は強調する。こうしたキーワードを頭に入れながら、香りに携わった長年の経験をもとに「魅力ある香り」をつくり出すという。また、パッケージにもこだわった。作成センターパッケージ作成部ファブリック&ホームケアCUの仲間典子ディレクターは「欧州の輸入雑貨を思わせるかわいい感じを狙った」と解説する。仏のフラワーアーティスト、ローラン・ボーニッシュさんの作品をパッケージにあしらい、ショーケースで存在感を示す。
花王によると、「フレア フレグランス」は「高残香性柔軟剤」でカテゴリーした場合、トップシェアを誇るという。この商品の躍進が原動力になり、同社の柔軟剤事業の売上高は過去最高を更新している。