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米航空各社は、パイロットの定年退職の増加が予想される上、経験についての規制の厳格化重なって採用がままならず、1960年代以降最も深刻なパイロット不足に陥っている。

 来年夏に実施される規制では、新規に採用されるパイロットの飛行経験は少なくとも1500時間と、現在の最低水準の6倍に強化される。賃金カットと運航数の増加でパイロット職の魅力が薄くなっている時に、航空会社のパイロットの養成にかかるコストと時間が膨らむ。一方で、主要航空会社の数千人のパイロットが間もなく65歳の定年を迎えようとしている。

 パイロットの1日の休憩時間を多くするという、2014年初めに実施される別の連邦規制もパイロット供給をきつくすることになる。この規則が実施されると、各社はパイロットの数を少なくとも5%増やさなければならなくなるとみられる。こうした問題のほかにパイロット不足の原因となっているのが、規模は小さいが着実な流れとなっている米国から外国の航空会社への転職だ。外国の航空会社の多くも深刻なパイロット不足に陥っており、各社は良く訓練された米国のパイロットを雇うために気前よく賃金を払おうとしている。

 アメリカン航空の親会社AMRの運航担当副社長を最近定年退職し、現在はパイロット訓練を行うフライトセーフティー・インターナショナル社のコンサルタントを務めるボブ・レディング氏は「危機的状況になろうとしている」と話した。パイロット採用に関するコンサルタント、キット・ダービー氏は「問題はわずか6カ月先にあるのに、解決には4年ほどかかる」と指摘した。

 問題の深刻さに対する見方はさまざまだ。大手航空会社の業界団体であるAirlines for Americaは、主要航空会社は退職者と運航拡大のために必要なパイロットを確保するため2025年までに6万人を新たに採用する必要がある、とのノースダコタ大学航空宇宙学部の研究報告を挙げた。大手航空会社の現在のパイロット数は合計5万0800人。

 ダービー氏の会社は、貨物、チャーター、地域航空会社も含めた米国の航空会社の全パイロット数は9万6000人近くで、今後8年間に6万5000人を追加採用する必要があるとみている。

 米議会が導入した規制の下で全てのパイロットが通過しなければならない航空輸送パイロット試験と呼ばれる米連邦航空局(FAA)の試験を受けたのは過去8年間に3万6000人いたが、全員が合格したわけではない。

 旅客にとって最大の影響は小規模な地域航空会社に出てくるとみられる。こうした会社は以前からパイロットの訓練所のような役割を果たしており、規模の大きな航空会社に人材を供給してきたが、大手航空会社はこうした航空会社からのパイロット獲得を拡大するとみられる。地域航空会社協会のロジャー・コーエン会長は今年7月の講演で、パイロット「供給における状況を一変させるようなことが起きない限り」中小航空会社は「定期運航の全てではないにしろ、一部を運航できなくなる恐れがある」と指摘した。

 ダービー氏によると、1980年代の大量採用と過去10年間の採用の少なさから、米国のパイロットの半分以上は50歳以上だという。規制当局は2007年、他の一部の国と足並みを合わせるため、定年の年齢をそれまでの60歳から65歳に引き上げた。一部の推定によれば、当時60歳だったパイロットの80%は現在そのまま働いている。しかし、今年12月には定年延長の対象となったパイロットの第1陣が65歳になるのだ。

 USエアウェイズのパイロット、ジョン・シルバーマン氏(64)は、定年規則が改定された時にそのまま残った1人で、来年4月には定年退職となる。同氏は「非常に健康だ」とし、「もっと働けるが、65は十分な年齢だ」と話した。

 FAAの運航基準担当部門のトップ、ジョン・アレン氏は、夏に開かれた業界会議で、定年退職者の数は「劇的だ」と述べるとともに、「われわれにはこの問題に対処できる方策がない」と語った。FAAの広報担当者は、FAAの公式な立場は「長期的なパイロット需要とその解決策をはっきりさせるためのデータを集めることだ」と述べた。

 一部の大手航空会社は、10年間にわたる組織再編のあと、再び雇用を始めることを計画している。デルタ航空は、1万2000人の水準を維持するには今後10年で3500人のパイロットを新規に採用する必要があると推定している。またアメリカン航空は最近、今後5年間に2500人を採用する計画だと述べた。さらに、ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングスは子会社コンチネンタル航空で何人かのパイロットを雇う求人を開始した。

 規制当局者や専門家の間には、パイロット不足によって安全面の問題が起きるのではとの懸念も生じている。



引用:米航空会社、深刻なパイロット不足に-大量の定年と規制強化で



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