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1年間延長された「中小企業金融円滑化法」の期限が来年3月末に迫ってきた。リーマン・ショック後の世界的な不況に中小企業を金融面から支援しようと始めた施策だが、中小企業の経営環境が改善されないままこの支援策は幕を閉じることになる。
同法は、借金返済に困っている中小企業などの借り手から返済計画変更(返済負担軽減)を申し込まれた際には、銀行はできる限り適切に応じるよう努力義務が課された法律。金融相だった亀井静香・国民新党代表(当時)の鶴の一声で始まった金融モラトリアム法だ。今年3月末までの時限立法だったが、不況の長期化で中小企業の業況や資金繰りが依然として厳しいことから、1年間延長された。
問題は、最近になって中小企業の業況・資金繰りが多少とも好転しているのかということだが、そうでもない。日銀の10月短観(全国企業短期経済観測調査、8~9月調査)によると、中小企業の業況判断(良い-悪い)は、製造業でマイナス14(前回マイナス12)と悪化しており、非製造業でマイナス9(同マイナス9)だった。これが12月にはどうなるかを聞くと、製造業ではさらに悪化のマイナス16、非製造業もマイナス16との答えである。資金繰り判断では、6月調査の短観時と比べて中小企業はマイナス4(前回はマイナス3)へと悪化している。
中小企業を取り巻く環境は、特に製造業でみれば先行き一段と厳しい。まず、円高の流れがある。大手メーカーは海外進出に拍車をかけるだろうし、電気料金の値上がりや消費税増税、環境税などの負荷がかかる。また、対中関係の悪化が経済面に悪影響を及ぼす懸念も出てきた。一方、非製造業は、デフレ下での内需縮小で売り上げが伸び悩む。地方産業はますます衰退への道を歩むことになる。
同様なことは、地方銀行、中小金融機関にもいえる。中小企業の経営が成り立たなくなれば、これら金融機関は「貸し出し先」「借り手」を失うことになる。持てる資金の運用先は国債が精いっぱいとなり、金融機関自身の経営が苦しくなる。
そうした一方で、日銀は金融緩和に努めている。貸出金利はせいぜい数%止まりで、市中への資金供給に余念がない。しかし、金融機関から先へ資金が流れない。大きくいえば、企業に設備投資などの資金需要がないからだ。ただ、中小企業の場合、運転資金のやり繰りがカツカツで、銀行との取引関係が常に厳しい状況のところも少なくない。
そうした中小企業へは、金融緩和だからといって融資基準が甘くなってより多くの資金が流れるわけではない。今の日本では資金需要の実際が、信用力のある大手企業などでは「要らない」一方、資金繰りに汲々としている中小・零細企業では「要るけど、なかなか苦心する」となっている。
ところで、この中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件変更利用後に倒産した企業も徐々に増えてきているのだ。
東京商工リサーチによると、2010年は49件(負債総額306億円)、11年は150件(同1115億円)、今年1~8月で144件(同996億円)と増加傾向となってきている。今年1~8月を産業別にみると製造業が42件と一番多く、次いで建設業の41件、卸売業21件、サービス業17件、小売業10件と続く。
円滑化法施行当初は、それなりの成果もあって中小企業の倒産も減ったが、その後の円高などから、業績不振となった大手企業は工場閉鎖などリストラを進め、下請けなどの中小企業はこうした波をもろにかぶり、金融支援も下支えにならず、倒産の憂き目に遭うに至った。つまり、リーマン・ショック後のデフレ不況はまだまだ続いており、それも深刻度を増してきていることを示している。長すぎた不況で、体力を使い果たしたのだ。
この先、不況克服の姿は見えてこない。それどころか、一層の円高や増税、エネルギーコストの上昇など経営環境の悪化は一段と進む見通しだ。早い時期に総選挙をやって、次の本格政権のもとで本格的な産業振興策を打ち出す以外にない。(産経新聞編集委員・小林隆太郎)