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政治、経済、外交でそれぞれ難題を抱える日本。世界最悪ともいえる財政状況もあり、その先行きに不透明感が漂う中、日独の金融関係者が「日本を救うのはベビーブーム」と述べ、話題をさらっている。無謀とも思われる、この発言の真意は…。
【フォト】 サイボス開幕を鏡割りで祝う三菱東京UFJ銀行のブース
「20年後の日本を救うのはベビーブームだ」 こんな意外な意見が飛び出したのは、世界中の金融エグゼクティブが大阪に集まり、11月1日に閉幕した国際金融会議「サイボス」の最終日。発言の主はインターネット専業生保のライフネット生命保険の出口治明社長と、ドイツ銀行のマイケル・スペンサー・チーフエコノミストだ。
両氏はサイボスのジャパンデーで「日本の将来」をテーマに対談。この中でスペンサー氏は、日本が解決しなければならない2つの問題を提起した。ひとつは先進国では最悪の財政赤字の解消。「消費増税をしても財政は持続可能とはいえない」との疑問を投げかけた。もうひとつは人口減少で、「減少する労働力を効率的に使い、生産性を向上させるイノベーションが必要」と冷静に分析した。
厚生労働省によると、平成23年の日本の合計特殊出生率は1・39。米国の2・09(平成20年)、フランスの2・00(同)などと比べると独の1・38(同)と並び最低水準だ。
人口の減少はスペンサー氏の指摘の通り、労働者の減少を意味している。同省によれば将来推計人口は、平成72年には8674万人となり現在の4分の3程度に減少する見込み。人口に占める生産年齢人口の割合は22年の63・8%から72年には50・9%、つまり人口の半分程度にまで下がることが見込まれている。そこに巨額の財政赤字、高齢者増加による社会保障費負担の増大など、将来世代に課題は重くのしかかっている。
一方、ネット専業生保として初の保有契約高1兆円を達成したライフネット生命の出口社長は、「ネットで売ることで保険料を30代でほぼ半分にして、安心して赤ちゃんを産んでもらいたいと思い、会社を作った!」とアピールした。
スペンサー氏の分析について、出口社長は「異存はないが、中長期的には日本の将来を楽観している」との持論を披露。その理由として、「日本はフランスのように赤ちゃんを増やす政策にまだ真剣に取り組んでいない。子育て関連政策の支出は仏はGDP比3%、日本は1%未満だ」と指摘した。
また、優秀な留学生を受け入れるとともに、女性や若者、外国人などダイバーシティ(多様化)を進めるなど、人口増加のための政策実現を訴えた。その上で「財政と少子高齢化は重い課題だが、潜在的な力をうまく引き出すことが国の発展につながる」と強い口調で訴えた。
20年後の日本の姿について、スペンサー氏は「ベビーブームに期待する。そうすれば、未来は明るい」と述べ、出口社長は「女性、若者、外国人が日本浮沈のカギ」と話した。日本で初めて開催されたサイボス。アジア諸国の参加者が増え、「次の成長は自分たち」と自信を深めている様子が会場の端々から感じられる一方、「日本の将来」を語るディスカッションには空席も。はたしてベビーブームは到来し、日本は再び存在感を示すことができるのか…。(石川有紀)