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先行きに光明を見いだせない民主、自民両党の二大政党制に行き詰まりを感じた有権者の期待を集め、「時代の息吹」を感じさせた「日本維新の会」が失速している。このまま尻すぼみで巻き返しを図れないとなれば、ひととき政界をにぎわした「あだ花」という仕儀になりかねない。
「維新ブーム」が下火になったのは、各種の世論調査の結果から明らかである。勢いに陰りが出た要因は、幾つか思い当たる。(1)次期衆院選をにらみ、政策のすりあわせをするために行われた国会議員らとの公開討論会の内容がお粗末だった(2)国政政党化のために参集した国会議員の知名度が低く、政治実績が乏しい(3)大阪市の橋下徹市長の人気に依存した「個人商店」であり、綱領「維新八策」を実現する組織力に疑問符が付く-などである。
だが、世論の離反を招いた何よりのきっかけは、橋下氏が口にした島根県・竹島に絡む発言ではなかったか。9月に行われた公開討論会では、竹島問題について「(韓国との)共同管理にもっていくしかない」との考えを示している。
言うまでもなく、竹島は、日本政府が1905年、島根県に編入する閣議決定をしている。それなのに、韓国の李承晩大統領が52年になって「李承晩ライン」という軍事境界線を一方的に設定し、この中に竹島を取り込んでしまった。
こうした経緯を踏まえれば、「共同管理」などという発想は出てこない。実際、外務省のホームページでも、こう断じている。
「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに我が国固有の領土」
「韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠」
将来的には、維新との連携を視野に入れる自民党関係者は、橋下氏の発言について、こんな見立てをする。
「外交の現場感覚がないのに、弁護士の発想で物事を解決しようとする。これでは国会議員とはいえず、ややもすると国益を損ないかねない」
沖縄県・尖閣諸島問題でも、別の席上で、「解決方法として国際司法裁判所(ICJ)を活用する戦略を打ち出したい」と語った。竹島と異なり、尖閣諸島は日本が実効支配をしている。先の自民党関係者によれば、「わざわざ領土問題があると国際社会に知らせるようなもの」であり、これも日本政府の方針を揺るがしかねない。
橋下氏はかつて、河野洋平官房長官(当時)が平成5年に発表した「河野談話」をめぐり、慰安婦募集における旧日本軍の強制性について、「証拠はない」と断言し、国会論戦の引き金を引いた。歴史的経緯を踏まえた真っ当な発言だった。ところが、竹島、尖閣両問題については、「小手先論」に陥ってしまった感がある。
「共同管理」発言などが橋下氏にとって痛いのは、保守層の離反を招きかねないということである。橋下氏は、日本の集団的自衛権に関し、「権利があれば行使できるのは当たり前だ」との考えを示したように、どちらかといえば、保守的思想がクローズアップされる。その考えに拍手を送る支持層を落胆させたのではないか。
橋下氏が連携相手として良好な関係にある安倍晋三元首相は、先の党総裁選で新総裁に選出され、「近いうち」とされる次期衆院選では、双方が党首として争う間柄となった。主張する政策に重複する部分が多く、維新としては、埋没感に気をもむところだ。
安倍氏に近い関係者によれば、維新にとって、安倍氏が総裁選で一定の存在感を示す形で敗れれば、最善のシナリオになったという。安倍氏が「有力な一議員」の立場で維新との連携をちらつかせれば、双方の相乗効果で国民の期待を引きつけられるというわけだ。
けれども、その道筋はもう描けない。となれば、「次の一手」をどう打つか。恐らくは誰よりも橋下氏が頭を痛めているだろう。いったんはこじれたみんなの党との関係修復には、そうした橋下氏の焦りが見て取れる。
橋下氏はかつて、各種世論調査で高い支持を得ている状況を「ふわっとした民意の後押し」と表現した。そうした民意は、事あればすぐに離れるし、また戻ってくる。「ふわっとした民意」を「がちっとした民意」にするには、橋下氏が「ふわっとした」発言をしないことである。